マンションでゴミ屋敷が発生した場合、その問題はまず「隣人からの苦情」という形で表面化することがほとんどです。壁一枚を隔てて生活しているため、隣接する住戸の住民は、ゴミ屋敷が引き起こす様々な問題に直接的にさらされ、深刻なストレスと不快感を覚えます。苦情の内容は多岐にわたりますが、最も多いのは「悪臭」に関するものです。ゴミ屋敷から発生する腐敗臭やカビ臭は、換気扇やドアの隙間、配管などを通じて隣の部屋に侵入し、生活空間に染み付いてしまいます。窓を開けることもできず、常に不快な臭いに悩まされることは、精神的な負担が非常に大きく、頭痛や吐き気といった体調不良を引き起こすこともあります。次に、「害虫の侵入」も深刻な苦情の原因となります。ゴミ屋敷で繁殖したゴキブリやダニ、ネズミといった害虫・害獣は、壁の隙間や排水管、共用部分などを経由して隣の住戸に侵入してきます。自宅が清潔に保たれていても、隣のゴミ屋敷が原因で害虫被害に遭うことは、住民にとって耐え難いストレスであり、健康被害のリスクも高まります。さらに、「騒音」に関する苦情も発生します。ゴミを整理する際の物音、あるいは害虫・害獣が壁の中を這い回る音などが、隣の住戸に響くことで、安眠が妨げられたり、日常生活に支障をきたしたりすることがあります。また、ゴミ屋敷に住む人が、問題行動（夜間の大声、奇声など）を起こす場合も、騒音トラブルに発展します。これらの苦情は、最初は直接的なものから始まり、解決が見られない場合は管理会社や管理組合への通報へとエスカレートします。隣人からの苦情は、ゴミ屋敷問題が個人の領域を超え、共有の生活空間を侵害している明確なサインであり、その放置は住民間の関係をさらに悪化させ、マンション全体のコミュニティに深刻な亀裂を生じさせることにも繋がりかねません。