ゴミ屋敷で「水漏れ」が発生した場合、その発見は極めて困難であり、多くの場合、被害が広範囲に及んでからようやく気づくことになります。なぜなら、ゴミの山が水漏れの兆候を隠蔽し、早期発見を妨げる大きな障壁となるからです。まず、最も大きな理由は「視覚的な遮蔽」です。床一面に積み上げられたゴミや不用品が、水漏れの発生源や、水が滲み出している場所を完全に覆い隠してしまいます。壁際や床下で水漏れが起こっても、ゴミが障害物となり、目視での確認が非常に難しくなります。そのため、水漏れはゴミの山の下で静かに進行し、カビの繁殖や建材の腐食が広範囲に及んでから初めて、表面に水が湧き出たり、悪臭が強くなったりすることで気づくというケースがほとんどです。次に、「臭覚の麻痺」も発見を遅らせる要因です。ゴミ屋敷は、生ゴミや腐敗物、カビなどによって常に様々な悪臭が充満しています。そのため、水漏れによって発生するカビ臭や湿った臭いが、他の強烈な悪臭に紛れてしまい、当事者自身が悪臭の変化に気づきにくい状態に陥っています。正常な嗅覚であれば異常を察知できるはずの臭いが、ゴミ屋敷の環境では全く気づかれずに見過ごされてしまうのです。さらに、「聴覚的な遮蔽」も影響します。水滴が落ちる音や、水が流れる音といった水漏れの兆候となる音も、ゴミの山が吸音材となり、聞こえにくくなることがあります。夜間など静かな時間帯であれば気づけるはずの微かな音も、ゴミ屋敷では聞き取ることが困難です。また、当事者自身が社会との接点を失い、孤独な生活を送っている場合、外部からの指摘が入る機会が極めて少ないことも、発見を困難にする要因となります。これらの要因が複合的に絡み合うことで、ゴミ屋敷での水漏れは「見えない場所で水は滲み」、被害が深刻化するまで発見されないという、悪夢のような状況を生み出すのです。
見えない場所で水は滲む発見困難な理由