「私の弟たちは双子で、いつからか二人の部屋がゴミ屋敷になっていました」。そう語るのは、彼らの姉であるユミさんだ。弟たちは幼い頃から仲が良く、成人してからも実家で暮らしていた。最初は「少し散らかっているな」程度だった部屋が、数年かけて見慣れない物で溢れかえり、やがて足の踏み場もなく、異臭が漂うようになった。ユミさんが何度か片付けを手伝おうと提案しても、弟たちは「大丈夫」「自分たちでやるから」と、頑なに拒否したという。「二人はいつも一緒で、お互いをかばい合うんです。片方が『捨てたくない』と言えば、もう片方も同調してしまって。私には、その絆が逆に問題解決を難しくしているように見えました」とユミさんはため息をつく。ある日、弟の一人が体調を崩し、病院に搬送されたことで、ゴミ屋敷の状況はついに公になった。医師からは「不衛生な環境による健康被害の可能性がある」と言われたという。「その時初めて、これはただの散らかりじゃない、二人の命に関わる問題だと痛感しました」とユミさんは語る。もう一人の弟は、倒れた弟を気遣う一方で、部屋を片付けることには抵抗を見せた。「二人の世界が壊れてしまうんじゃないか、と怖がっているようでした」。ユミさんは、行政や専門業者に相談し、根気強く二人の説得を続けた。最初は反発した弟たちも、倒れた弟が回復していくにつれて、少しずつ片付けを受け入れるようになったという。「時間はかかったけど、二人の気持ちに寄り添い続けることが大切だと学びました。ゴミの山は、二人の心を閉じ込めていたんです」とユミさん。今では部屋もきれいになり、二人は少しずつ社会との接点を取り戻し始めている。「まだ完全じゃないけど、二人が前向きに生きようとしているのが、何より嬉しい」と、ユミさんは目を潤ませた。