オーストラリアにおいてゴミ屋敷問題は、深刻な山火事のリスクや害虫の発生という、大自然と隣り合わせの国ならではの脅威として認識されています。オーストラリアの多くの州では、ゴミ屋敷は単なる個人の問題ではなく、公衆衛生法(Public Health Act)に抵触する違法状態とみなされることがあります。特に、不用品が屋外にまで溢れ出し、蛇やネズミの巣窟となったり、乾燥した季節に火災の燃料となったりする場合、地方自治体(カウンシル)は非常に強力な権限を行使します。カウンシルは、住人に対して一定期間内の清掃を命じる「クリーンアップ・オーダー」を発行し、これに従わない場合は法外な罰金が科せられるだけでなく、強制的な撤去作業が行われ、その費用は不動産に対する差し押さえの対象となることさえあります。オーストラリアのゴミ屋敷の特徴として、広い敷地を利用したスクラップ車両や古い建材の蓄積が多く見られます。これらは一見するとゴミには見えないかもしれませんが、放置されることで土地の価値を下げ、環境汚染を引き起こす原因となります。その一方で、オーストラリアはメンタルヘルスに対する理解が非常に進んでいる国でもあります。カウンシルの中には、強制執行の前に「ホーディング・アシスタンス・プログラム」を提供し、ソーシャルワーカーが介入して住人の精神的なケアを行うところも増えています。オーストラリアの研究機関では、ホーディング障害と遺伝的要因や脳の機能に関する研究も盛んに行われており、単なる性格ではなく、情報処理の障害であるという理解が一般的になりつつあります。また、多文化社会であるオーストラリアでは、移民世帯における生活習慣の違いや、母国での苦い経験から物を捨てられなくなる心理など、多様な背景を考慮した支援が求められています。広大な大地を持つオーストラリアであっても、都市部の過密化とともにゴミ屋敷問題はより複雑化しており、法による厳格な執行と、人間味のある福祉的支援のバランスをどう取るかという試行錯誤が続いています。