日本全国で増加し続けている「空き家問題」は、そのまま「ゴミ屋敷の増加」と直結しています。特に親が亡くなった後に残される、いわゆる「実家のゴミ屋敷化」や、遺品整理ができずに放置される「相続ゴミ屋敷」が社会的な懸念事項となっています。かつての日本では、親の死後、実家を継ぐ子供が家財道具を整理し、自分たちの生活に組み込んでいくのが一般的でした。しかし、現代では子供たちは都市部で自分の生活基盤を築いており、実家にある膨大な遺品を受け入れるスペースもなければ、それを整理する時間的・精神的な余裕もありません。また、高齢の親が亡くなる直前までゴミ屋敷状態で暮らしていた場合、残されたゴミの量は数トンに及ぶこともあり、その処分費用は数十万円から数百万円という高額なものになります。この経済的な負担と、誰が費用を出すかという親族間の揉め事が、片付けを先延ばしにさせ、結果として空き家がそのままゴミ屋敷として放置されることになります。放置されたゴミ屋敷は、放火の危険や害虫の発生、建物の倒壊など、近隣住民にとっての大きな脅威となりますが、所有権が複雑な相続に絡んでいる場合、行政も手出しができず、問題は長期化します。また、親が生きているうちに片付けを提案しても、「自分の持ち物を勝手に捨てるな」という反発に遭い、いわゆる「実家の片付けトラブル」として親子関係に亀裂が入ることも少なくありません。増加する相続ゴミ屋敷は、私たちが「物を溜め込む世代」から「物を持ちたくない世代」への過渡期にあり、その間の遺産の処理というシステムが全く整っていないことを示しています。この問題を解決するには、生前整理を「死の準備」として忌むのではなく、残された家族への思いやりとしてポジティブに捉える文化の定着や、行政による空き家内の不用品撤去に対する補助金制度、さらには安価で信頼できる遺品整理サービスの普及など、多角的な支援が必要です。空き家という箱の中に閉じ込められた過去の遺物たちが、地域の安全を脅かす存在にならないよう、私たちは「終わり方」のデザインを真剣に考える時期に来ているのです。
空き家の急増と遺品整理の困難さが生む「相続ゴミ屋敷」