イギリスにおいて、ゴミ屋敷問題は特にカウンシル・ハウジング(公共住宅)や歴史的なフラット(共同住宅)において深刻な懸念事項となっています。イギリスの住宅事情は、古い石造りや煉瓦造りの建物が多いため、一軒で火災が発生すると瞬く間に建物全体に燃え広がる危険があります。そのため、消防当局はゴミ屋敷の把握に非常に神経を尖らせており、「ファイヤー・アセスメント(火災リスク評価)」の観点から定期的な巡回や啓発活動を行っています。イギリスのゴミ屋敷の住人の多くは、戦時中の物のない時代を経験した高齢者や、その教訓を強く叩き込まれた世代であることが多く、物を無駄にすることを極端に恐れる心理が背景にあることが指摘されています。また、イギリス特有の制度として、地方自治体がゴミ屋敷の住人に対して「クリーンアップ・ノーティス(清掃命令)」を出し、期限内に改善されない場合には、自治体が清掃を行いその費用を住人に請求するという厳格な手続きが確立されています。しかし、近年では単なる罰則ではなく、セルフネグレクトの兆候がある住人を早期に発見し、ソーシャルワーカーやメンタルヘルス専門家を派遣する予防的アプローチに力が入れられています。イギリスの福祉現場では、ゴミ屋敷を「隠れた自傷行為」と捉える見方もあり、住人が抱える抑うつや喪失感に焦点を当てたカウンセリングが重視されています。また、イギリス国内の清掃業者の中には、ゴミ屋敷専門のコンサルタントとして活動する者もおり、単にゴミを搬出するだけでなく、住人が納得して手放せるようなコミュニケーション技術を駆使しています。近隣住民とのトラブルについても、イギリスでは地域コミュニティの監視の目が厳しく、異臭や害虫が発生した際には容赦なく通報が行われますが、同時にコミュニティ内での助け合いによって解決を図ろうとする動きもあります。このように、イギリスのゴミ屋敷対策は、古い建物を守るという物理的な要請と、個人のメンタルヘルスを支えるという人道的な要請の狭間で、常にアップデートを繰り返しています。
イギリスの公共住宅におけるゴミ屋敷と火災リスク