いわゆる「商売人のゴミ屋敷」では、家庭ゴミとは比較にならない規模の産業廃棄物が発生し、その処理スキームには専門的なビジネス的視点が求められます。例えば、廃業した商店の主が、大量の在庫品や店舗什器、什器、さらには業務用の厨房機器などを自宅に溜め込んでしまった場合、これらは個人の所有物であっても「事業活動に伴って生じた廃棄物」とみなされ、産業廃棄物の区分が優先されるケースが多くなります。特に、デッドストックとなった大量のプラスチック製品や、業務用の大型冷蔵庫に含まれるフロンガス、古いコピー機のトナーなどは、自治体の家庭ゴミ回収では絶対に取り扱えません。これらを処理するためには、まず産業廃棄物の品目ごとに細かく仕分けを行い、それぞれの処分場と契約を結ぶ必要があります。ゴミ屋敷清掃の現場責任者は、現場にある数千、数万点に及ぶ物品を「リサイクル可能な有価物」「一般廃棄物」「産業廃棄物」の三つのカテゴリーに瞬時に分類する決断力が試されます。特に、有価物として売却できるものがあれば、それを産業廃棄物の高額な処理費用と相殺し、住人の金銭的負担を軽減することが可能になります。しかし、長年放置された在庫品は劣化が激しく、有価物としての価値を失っていることがほとんどで、その場合は「混合廃棄物」として、より高い処分料を支払って処理せざるを得ません。また、店舗什器としての金属棚や木製ラックなどは、解体して容積を減らすことで運搬コストを抑える工夫も必要です。このような事業系ゴミが中心のゴミ屋敷では、業者は「産業廃棄物収集運搬」のライセンスはもちろん、家電リサイクル法やフロン排出抑制法といった関連法規に対する深い理解が不可欠です。住人側も、かつての商売の遺産を「単なるゴミ」として捨てることへの心理的抵抗が強いですが、産業廃棄物として法に則って正しく処理し、マニフェストを受け取ることこそが、その事業を最後まで全うし、社会的な責任を果たすことであるという認識を持つべきです。プロの業者は、そうした感情に寄り添いつつも、法的な正義を貫くことで、複雑に絡み合ったゴミ屋敷の糸を解きほぐしていくのです。
事業用在庫がゴミ屋敷化した際の産業廃棄物としての処理スキーム